- 自閉症スペクトラム症(ASD)とは
- 大人の自閉症スペクトラム症(ASD)の
特徴 - ASDは、顔つきに特徴がある?
- 自閉症スペクトラム症(ASD)と自閉症は違う?
- 自閉症スペクトラム症(ASD)の診断方法
- 自閉症スペクトラム症(ASD)の治療法
自閉症スペクトラム症(ASD)とは
自閉スペクトラム症とは、悪意なく相手を怒らせてしまうといったコミュニケーションの困難、臨機応変な対応ができないといったこだわりの強さなどが見られる発達障害のことを指します。
職場、ご家庭、仲間内などにおいて、さまざまな問題やトラブルの原因になることがあります。非難されたり、仲間外れにされるなどして、孤独感・疎外感に苛まれている方も少なくありません。
自閉スペクトラム症かもしれないとお感じになる方、親しい人から発達障害の可能性を指摘された方、あるいは以前に自閉スペクトラム症と診断されたものの治療から遠ざかっている方は、ぜひ一度当院にご相談ください。
大人の自閉症スペクトラム症(ASD)の特徴
自閉スペクトラム症は、「人との交流・社会的交流の困難」「こだわりの強さ」を主な症状とする発達障害です。以前は言語性コミュニケーションの障害と社会相互交流の障害を分けて捉えられていましたが、新しい診断基準(DSM-5)に基づき、この2つの障害がひとまとめになっています。
具体的には、以下のような特性が見られます。
人との交流・社会的交流の
困難
- 相手との適度な距離感が掴みにくい
- 話がかみ合わないことが多い
- 感情、興味などの共有・共感が難しい
- 相手の表情、話し方などから感情を推測することが難しい
- 相手の気持ち、期待を読み取って発言する・行動することが難しい
- 言葉の使い方、発音時のイントネーションが独特
- 集団行動が得意でない
- 皮肉や冗談を理解できない、怒ってしまうことがある
- 暗黙のルールを理解することが難しい
こだわりの強さ
- 物事を自分が決めた手順で進めたがる、手順が変わるとパニックになる
- 何かに没頭した時、まわりが見えなくなる
- まわりの人が気にしない些細なことが引っかかり、作業がうまく進まない
- 音・光・におい・人との接触などに対して過敏
- 何かに没頭するとまわりが見えなくなる
その他、周辺症状として注意欠陥多動性障害、限局性学習障害、うつ病、パニック障害、睡眠・覚醒障害などが見られることもあります。
ASDは、顔つきに
特徴がある?
自閉スペクトラム症の方の顔つきの特徴については、科学的根拠のある有無や傾向などは報告されていません。
ただし、ごく一部の研究において、自閉スペクトラム症のうちの自閉症において、目・眉の位置、口の形などについての一定の傾向が指摘されています。
また、自閉スペクトラム症の子どもにおいても、以下のような特徴が指摘されることがあります。

- 感情表現(変化)が乏しい
- 視線が合わない
- 状況や場に応じた表情ができない
この傾向に当てはまる場合、「心の冷たい人」「礼儀がなっていない人」「愛想のない人」といったような誤解が生まれることが少なくありません。
ただ、自閉スペクトラム症を含む発達障害ではない方であっても、上記のような特徴が見られ、誤解されるということはあります。ご自身、あるいはまわりの人がこのような表情であるから自閉スペクトラム症などの発達障害だと決めつけることは危険であり、倫理的にも正しくありません。
気になる場合には、必ず心療内科や精神科を受診し、専門知識を有する医師に診てもらいましょう。
自閉症スペクトラム症(ASD)と自閉症は違う?
自閉スペクトラム症と自閉症は異なるものです。
まず自閉症とは、言葉の遅れ、知的障害を伴い、人とのコミュニケーションに困難を抱える状態を指します。そして自閉スペクトラム症とは、従来の診断基準で自閉症、アスペルガー障害、広汎性発達障害と呼ばれていた疾患の総称です。
現在、自閉スペクトラム症の有病率は1%以上であり、男性は女性の数倍、リスクが高くなると言われています。
自閉症スペクトラム症(ASD)の診断方法
DSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)、ICD-10(国際疾病分類第10版)などの診断基準に基づき、診断します。
診察では、症状や日常生活でのお困りごと、幼少期・学童期の成育歴をお伺いします。ご家族などに予め聞いてきていただいたり、同席してお話を聞かせていただいたりすると、その情報が診断に役立ちます。
また、必要に応じて、心理検査も実施します。
心理検査について
当院では、医師の指示のもと、公認心理師による心理検査を実施しております。
検査内容に応じて保険適用となり、以下のような自己負担額となります(3割負担の場合)。
費用 | |
WAIS(知能検査) | 3,000円 |
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ロールシャッハテスト | 2,400円 |
SCT(文章完成テスト)など | 2,000円 |
自閉症スペクトラム症(ASD)の治療法
自閉スペクトラム症を含む発達障害は、脳の特性を原因として起こるものであるため、根本的な治療は未だ確立されていません。
しかし、患者様の得意/不得意を整理し、適切な対応、環境調整をすることで、日常生活中の困難や生きづらさを軽減することが可能です。その場合、配偶者・ご家族の方、職場の上司などのサポートも大切になります。
また、うつ病、不安障害といった二次障害がある場合には、その障害に対する薬物療法も行います。
その他、精神障害者保健福祉手帳の取得、公的な支援制度の活用などについても、当院でできる限りのサポート、アドバイスをいたします。