「眠れない子どもたち」——児童思春期に増える睡眠トラブルの背景と対策
◆ 「夜が来るのがこわい」——子どもたちの睡眠の悩み
「なかなか寝つけない」「夜中に何度も目が覚める」
「朝起きられない」「昼夜逆転している」——
こうした“睡眠に関する相談”が、吹田市の当院にも年々増えてきています。
とくに児童思春期に入った子どもたちは、心身の変化と生活環境のストレスが重なり、眠りの質が乱れやすくなる傾向があります。
「睡眠」は心の健康と密接に関わっており、質の悪い睡眠が続くと、感情のコントロール力や集中力が落ち、結果として学校生活や人間関係に影響を及ぼすことも少なくありません。
◆ 思春期の「体内時計」のズレに注目を
思春期になると、**生物学的な体内時計(概日リズム)**が後ろにずれる、という現象が知られています。
これは「夜型思考」の原因のひとつであり、自然な生理現象とも言えます。
・ 夜になってもなかなか眠くならない
・ 朝は起きづらく、頭がぼんやりする
・ 日中に眠気が強く、集中できない
こうしたリズムの変化に、学校の早い始業時間や塾などの活動が加わることで、ますます眠りの質が下がってしまうのです。
吹田市のような都市部では、スマートフォンの普及や夜間の生活習慣の多様化もあり、「寝るタイミングを逃す」子どもたちが増えています。
◆ 「眠れない理由」が心理的な場合も
睡眠トラブルの原因は、体内時計の乱れだけではありません。
以下のような心理的な不安や緊張が、眠りを妨げているケースもあります。
・ 明日の学校が不安で眠れない
・ 友だちとのトラブルを思い出してしまう
・ 失敗したことが頭から離れない
漠然とした「何かに襲われるような感じ」がある
これらは、不安障害やうつ状態の初期サインであることもあります。
とくに夜は、刺激が少ない分、ネガティブな思考が増幅しやすい時間帯です。
「明日が来なければいいのに」と感じながら眠れない夜を過ごす子どもたちは、決して少なくありません。
◆ 家庭でできる睡眠改善の工夫
睡眠リズムを整えるために、家庭でできることもいくつかあります:
1.寝る1時間前にはスマホやゲームを控える
→ ブルーライトが睡眠ホルモン(メラトニン)の分泌を妨げます。
2.お風呂は寝る90分前までに
→ 深部体温の自然な低下が、眠気を促します。
3.「今日よかったこと」を話す時間をつくる
→ 不安よりも安心を感じた状態で眠れるように。
4.起きる時間を固定する
→ 就寝時間よりも「起床時間」を一定に保つことがリズム回復の鍵になります。
特に吹田市のように生活が便利で、夜の活動がしやすい地域では、「家庭内での照明・音・習慣の見直し」が効果的な場合があります。
◆ 医療のサポートが必要な場合とは?
睡眠の乱れが1〜2週間以上続いていたり、本人が「眠れないこと」そのものに苦痛を感じているようであれば、
医療機関での評価や対応を考えるタイミングです。
当院では、児童思春期の睡眠トラブルに対して、
・生活リズムの見直し支援
・CBT-I(不眠症に対する認知行動療法)に準じた介入
・必要に応じた軽度の薬物療法(慎重に検討)
などを組み合わせて支援を行っています。
また、睡眠トラブルがADHDやASDなど発達特性と関連しているケースも多いため、心理検査や発達評価も合わせて行うことがあります。
◆ 睡眠は「回復の入り口」——そこから始めるケア
子どもたちが安心して眠れる夜を取り戻すことは、心の安定・学力の向上・人間関係の改善すべてに繋がる重要なステップです。
「ちゃんと寝なさい!」と叱るよりも、
「眠れないときは、理由があるかもしれない」と寄り添う。
その姿勢が、子どもにとっては何よりの安心になります。
吹田市の地域の中で、子どもたちが「夜が怖くない」「明日を迎えられる」ように、私たち医療機関も支援を続けていきます。