「自分が嫌い」——自己肯定感が育ちにくい子どもたちへのまなざし
◆ 「どうせ自分なんて…」という口ぐせ
「失敗ばかりする」
「自分なんていなくてもいい」
「どうせ無理だよ」——
こうしたネガティブな言葉を繰り返す子どもたちが、吹田市の当院にも少しずつ増えてきています。
特に思春期に差しかかる時期は、自己評価の基盤が大きく揺らぐ時期。
「自分って何なんだろう」「誰にも理解されていない」といった孤独感が、子どもの内面に影を落とします。
この時期の“自分嫌い”は、放っておくと心のエネルギー低下や不登校、うつ状態などにもつながりかねません。
◆ 自己肯定感とは「なんでも自信があること」ではない
自己肯定感というと、「何事にも自信がある」「自分を好きでいられる力」と思われがちですが、
本質は少し違います。
本当の意味での自己肯定感とは、
・できることもあれば、できないこともある
・うまくいかない日もあるけど、自分は自分
・周りと違っていても、それでも大丈夫
——というような、“ありのままの自分を認められる感覚”のこと。
ですから、勉強が得意でなくても、運動が苦手でも、「そんな自分でも、ここにいていい」と思える経験が大切なのです。
◆ 子どもが「自分を嫌いになる」背景とは?
児童思春期の子どもが自己肯定感を持ちづらくなる背景には、いくつかの共通点があります。
・失敗体験が多く、成功体験が少ない
→ 頑張っても評価されなかった経験が積み重なると、「どうせダメ」と思いやすくなります。
・親や先生から否定的な言葉を受けてきた
→ 「なんでできないの?」「また失敗したの?」といった言葉が、自己否定を強めます。
・周囲と比べられることが多い
→ 兄弟姉妹やクラスメートとの比較が、「自分は劣っている」という誤解につながります。
吹田市のような教育熱心な地域では、学業や課外活動に対する期待が高く、「もっとできる子」になってほしいという無言のプレッシャーが、知らず知らずのうちに子どもを苦しめていることもあります。
◆ 「存在そのものを肯定する」関わりを
子どもたちが「自分はダメだ」と思い込んでいるとき、
私たち大人にできる最大の支援は、「あなたがここにいてくれることが嬉しい」と伝えることです。
「よく頑張ったね」
「いてくれるだけで安心するよ」
「あなたのペースで大丈夫」
——こうした“存在の肯定”は、子どもにとって大きな安心となり、
「自分はここにいていい」と思える小さな足がかりになります。
成績や成果だけを褒めるのではなく、その子の価値を“条件なし”で伝えることが、長い目で見て自己肯定感の土台になります。
◆ 当院での取り組み:自己肯定感を育てる心理支援
ゆうゆうからだとこころのクリニックでは、児童思春期のお子さんに対して、
以下のような心理支援を行っています。
・自分の“いいところ”を探すワーク
・過去の成功体験を振り返るセッション
・自分を否定された経験を整理する対話
・他者との違いを肯定的に捉えるスキルトレーニング
これらを通じて、子どもたちは少しずつ、“嫌いだった自分”と向き合う力を育てていきます。
吹田市の教育機関や保護者の皆さまと連携しながら、社会全体で子どもの“心の根っこ”を育む支援を進めています。
◆ 比べない・急がせない・否定しない——大人ができる3つのこと
1.比べない
→ 他人との比較ではなく、「昨日の自分」との違いに注目する声かけを。
2.急がせない
→ 自己肯定感の回復には時間がかかるため、「変わらなくても、そばにいるよ」という安心感を。
3.否定しない
→ 「でも」「それじゃダメ」などの否定語はなるべく避け、まずは感情を受け止めてあげること。
「自分が嫌い」とつぶやくその子は、
「誰かに好きって言ってほしい」と願っているのかもしれません。
吹田市という街の中で、
子どもたちが“自分らしく”育っていけるよう、私たち大人も問い続けていきたいと思います。