“こだわりが強い子”——安心のためのルールと世界の捉え方
◆「いつも同じじゃないとイヤ」「予定が変わるとパニックに」
・帰宅ルートが違うと泣いて怒る
・朝の準備の順番が決まっていて、崩れると混乱
・給食の食器の並びがいつもと違うだけで食べられない
・指定した服しか着たくない、特定の色や形しか受けつけない
こうした“こだわり”は、ときに周囲の大人を悩ませます。
吹田市・北摂地域でも、「融通がきかない」「頑固すぎて困る」という相談が多く寄せられます。
しかしこの“こだわり”は、単なる我儘や意固地さではなく、
子どもが世界を安心して生きるための“秩序”への強いニーズである場合が多いのです。
◆ 「こだわり」は“安心のための手すり”
大人でも、「毎朝同じコーヒー」「ルーティンの運動」など、
自分なりのこだわりや習慣を大切にしている人は少なくありません。
それが子どもにとっては—
・世界の複雑さや予測不能性から自分を守る盾であり
・不安を抑えるためのコントロール手段であり
・ひとつの行動を通して自己を保つ軸にもなっている
というように、こだわりが“自分を守るための知恵”になっているケースもあるのです。
◆ 北摂の事例:年長男児の「カーテンの開け方」へのこだわり
北摂地域の保育園に通う年長の男の子。
朝の会の前に、自分でカーテンを開けないと気が済まず、
先生が先に開けてしまうと、怒って部屋を飛び出してしまうことが何度もありました。
先生たちは「またか…」と困っていたものの、
本人の話を丁寧に聴くと、こんな言葉が出てきました。
「ぼくが開けると、ちゃんと一日が始まる気がする」
「その前に開いてると、ぐちゃぐちゃになる感じがして、イヤ」
彼にとって“カーテンを開ける”という行為は、
世界の秩序を取り戻すための儀式のようなものだったのです。
◆ “こだわり”が強くなる背景とその心理
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要因 |
背景にあるもの |
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感覚の過敏さ |
特定の音・光・感触に強く反応しやすく、「いつも通り」によって予測と安心を得ている |
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認知の柔軟性の課題 |
「違う方法」や「変更」への切り替えが苦手で、混乱しやすい |
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不安特性 |
「変化=危険」という前提があり、安定した手順にしがみつこうとする |
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発達特性(ASDなど) |
世界の意味づけに一貫性とルールを求めやすく、それがこだわりとして表れる |
つまり、“こだわり”は外側の見た目だけではなく、
内側の不安、繊細さ、調整力の問題の表出であることが多いのです。
◆ 吹田市の心療内科での支援:「こだわり」の意味を翻訳する
「ゆうゆうからだとこころのクリニック」では、
こだわりを「やめさせるべきもの」ではなく、
「理解し、付き合い方を一緒に探るべきもの」として扱います。
🔹① こだわりの“役割”を一緒に探る
→ それは「安心するため」なのか?「決まりだから」なのか?
本人の中でどういう意味を持っているのかを、丁寧に翻訳していきます。
🔹② “一部だけ変える”練習から始める
→ ルーティンを壊すのではなく、
「今日はこれだけ変えてみようか」という小さな揺らぎを段階的に導入します。
🔹③ 替えの効く“安心アイテム”を準備する
→ 特定のモノや方法にこだわる場合、
**「AがだめなときはBでも大丈夫」という“代替パターン”**を一緒に作ります。
🔹④ 家庭と連携し、“変化のサイン”を共有
→ 家でも園・学校でも同じように対応できるよう、
こだわりの強さや反応の出方について共通理解を図ります。
◆ ご家庭でできる3つの関わり方
🔷 ① 「こだわり=面倒くさい」と捉えない
→ 「この子なりの秩序やルールがあるんだな」と思うだけで、
関わり方に余裕が生まれます。
🔷 ② 変更があるときは“予告”と“選択肢”を
→ 「今日はいつもと違う道を通るよ。でも最後は同じ場所に着くよ」など、
事前に伝え、安心感を渡すことが重要です。
🔷 ③ うまく切り替えられたときは“行動”より“気持ち”をほめる
→ 「よく我慢したね」ではなく、
「びっくりしたけど、がんばって合わせてみたんだね」と、内側に目を向けて言葉をかけます。
◆ こだわりの奥には、“世界とつながろうとする努力”がある
子どもの“こだわり”を見て、
「このままで大丈夫かな?」と不安になるのは自然なことです。
でも、そのこだわりが安心の拠り所であり、秩序を保とうとする努力の証だとしたら、
それを無理に壊すのではなく、
“そのままの形で社会とつながれる橋”を一緒に架けていくことが、私たち大人にできる支援かもしれません。
吹田市・北摂地域で、私たちは
こだわりの背後にある「その子なりの意味」に寄り添いながら、
「安心して変化に出会える力」を育てていく支援を続けています。