“どうせムリ”と言う子ども——学習性無力感と自己効力感
◆「やっても意味ない」と言う子どもに、どう声をかけたらいい?
・勉強を始める前から「どうせ無理」と言って投げ出す
・習い事やクラブでもすぐに「できない」「向いてない」と言う
・ミスや失敗を過剰に引きずる
・成功体験があっても、「運が良かっただけ」と片付ける
吹田市や北摂地域の保護者の方からも、
「挑戦しようとしない」「すぐにあきらめてしまう」といった相談が寄せられます。
一見“やる気がない”ように見えても、
その内側には、**「頑張ったけど報われなかった記憶」**や、
**「失敗による深い傷つき」**が眠っているのかもしれません。
◆ 「学習性無力感」とは?
心理学者マーティン・セリグマンが提唱した概念で、
繰り返し「何をやっても状況が変わらなかった」経験をした人が、
「自分には何も変えられない」と感じ、努力を放棄する心の状態です。
子どもが学習性無力感に陥ると:
・成功しても「偶然」と解釈し、自分の力と結びつけない
・小さな失敗で「やっぱり自分はダメだ」と極端な結論を出す
・「他人はできるのに、自分だけが無力」と感じ、孤立する
・挑戦自体を避けるようになる
◆ 北摂のある事例:小5の男の子の場合
北摂地域のある小学校に通う5年生の男の子。
以前から算数が苦手で、テストでは努力しても平均点以下のことが続きました。
やがて彼は、こう言うようになりました。
「どうせ俺、バカだし」
「がんばったってムダ」
「やる前からわかる。無理だから」
家族も「もっと自信を持ってほしい」と励ましましたが、
「それはできる人の言葉」と、心のシャッターを下ろしてしまっていました。
◆ 吹田市の心療内科での支援方針
「ゆうゆうからだとこころのクリニック」では、
こうした“無力感”を抱える子どもたちに対し、次のようなプロセスで支援を行います:
🔹 ① 小さな成功体験の積み重ね
→ 最初から大きな課題ではなく、「今週中に鉛筆を削ってランドセルに入れる」など、達成可能な課題から始める
🔹 ② 成功したことを“自分の力”と認識させる言葉がけ
→ 「ちゃんと間に合ったね。工夫して早めに始めたのがよかったね」など、努力と成果のつながりを言語化
🔹 ③ 失敗に対する“別の意味づけ”を学ぶ
→ 「うまくいかなかったけど、やり方を見直すチャンスだったね」と、挑戦そのものの価値を評価
🔹 ④ ネガティブな自己評価の検討(認知のゆがみへの介入)
→ 「“全部ダメ”って思うけど、実際にうまくいったこともあるよね」と、一緒に事実を振り返る。
🔹 ⑤ 周囲の比較ではなく、“昨日の自分”との比較へ
→ 「○○くんは関係ないよ。昨日の君と比べて、今日は1問多く解けたね」と、自己効力感を回復する方向へ導く。
◆ ご家庭でできる3つの声かけ
🔷 ① 「できたこと」だけをピンポイントで言語化
→ 「さっき、ちゃんと1問目に手をつけたね」など、始めたこと自体を肯定
🔷 ② 結果より“挑戦したこと”を称賛する
→ 「今日、チャレンジしてみたのが本当にすごいね」
🔷 ③ 「君ならできる」ではなく「一緒に考えよう」
→ 一方的な励ましより、並走する姿勢が子どもに安心感を与えます。
◆ 無力感の陰にある「がんばりたかった気持ち」
「どうせムリ」と言う子どもは、
かつてどこかで「がんばったけど、誰にも気づかれなかった」
「努力が報われなかった」
という経験をしているかもしれません。
吹田市・北摂地域で、
私たちはそうした子どもたちの「がんばれなかった過去」ではなく、
「もう一度、やってみようかな」と思える現在に寄り添いたいと考えています。