“ひとりで抱え込む子”——相談できない、助けを求められない心の仕組み
◆「しんどいはずなのに、何も言ってこない」
・明らかに元気がないのに「大丈夫」と言う
・問題が起きても一人で解決しようとする
・悩みを誰にも話さず抱え込み、突然崩れる
・周囲が気づいた時には限界に達している
吹田市・北摂地域でも、「相談できない子」「頼れない子」への対応に困っているという声を、
学校や保護者の方々から頻繁にいただきます。
「素直に話してくれれば助けられるのに」と思う一方で、
当の子どもたちは**“話せない理由”を言葉にできず、さらに孤立していく**のです。
◆ “相談できない”は能力ではなく、経験の問題
子どもが悩みを共有するには、
「誰かに話しても大丈夫」「わかってもらえる」という心理的安全性が必要です。
しかしそれが欠けた環境では、
**「話さない方がまし」「どうせ言っても無駄」**という“学習”が蓄積されていきます。
◆ なぜ、子どもは相談できなくなるのか?
① 迷惑をかけたくないという思いやり
→ 「お母さんは忙しそうだから」
→ 「友だちに心配かけたくない」
といった、優しさゆえの沈黙もあります。
② 過去に「軽く扱われた」経験
→「そんなの気にしすぎ」
→「それぐらい大丈夫でしょ」
という言葉が、“もう話すのはやめよう”という決断に繋がることがあります。
③ “がっかりされるのが怖い”
→「悩んでる自分を見せたら、期待に応えられないと思われる」
→「強くありたい」と思う子ほど、弱さを見せることに大きな葛藤があります。
④ どう相談すればいいか、わからない
→ 「何がしんどいか、自分でもわからない」
→ 「言葉にできない」
という状態では、“話したいのに話せない”というフリーズが起こります。
◆ 北摂の事例:中3男子の“沈黙のSOS”
北摂地域の中学校に通う男子生徒。
成績も良く、問題行動もなかったため、教師も親も「大丈夫な子」と思っていました。
ある日突然、朝起きられなくなり、過呼吸で救急搬送。
初めて心療内科を受診した際、彼はこうつぶやきました。
「誰かに助けてって言いたかったけど、どう言えばいいかわからなかった」
「“大丈夫?”って聞かれるたびに、大丈夫なふりを重ねてた」
この言葉が象徴するように、
“沈黙しているから大丈夫”とは限らないのです。
◆ 吹田市の心療内科での支援:「言えなかった理由」ごと受け止める
「ゆうゆうからだとこころのクリニック」では、
相談できない子どもに対して、以下のようなプロセスで支援しています。
🔹① 言語化の前に「感じる安全」をつくる
→ まずは「話すこと」よりも「一緒にいる時間」の質を大切にします。
沈黙も“対話”の一部であるという前提で寄り添います。
🔹② “相談してよかった経験”を小さく積む
→ 「言ってよかった」「ちゃんと聴いてもらえた」という経験が、
“もう一度話してもいいかもしれない”という感覚を育てます。
🔹③ 書く・描く・選ぶなど、非言語的手段を使う
→ 会話だけでなく、絵カードやチャート、日記、シート形式など
“話す前の準備”ができる手段を用いて表現を支援します。
🔹④ “相談できなかった自分”を責めないようにする
→ 「なんで黙ってたの?」ではなく、
「話してくれてありがとう。しんどかったよね」と現在を肯定する声かけを徹底します。
◆ ご家庭でできる3つの関わり方
🔷 ① 毎回聞かなくていい、“常設の窓口”を意識する
→ 「何かあったら、いつでも言ってね」と、聞かれることを待たずに開かれた関係をつくる。
🔷 ② 子どもの沈黙に“安心”で応える
→ 「話してくれない=拒絶された」と受け取らず、
“まだ言葉になってないだけ”という理解を持つ。
🔷 ③ 親自身が「相談してよかった経験」を語る
→ 「昔、先生に話してみて救われたことがあったよ」など、
大人の“相談モデル”を見せることも、子どもには大きな学びになります。
◆ 「助けて」と言えることは、力の証拠
「ひとりでがんばる力」も尊いものです。
でも、「ひとりで抱えない力」は、
それ以上に人間関係を築き、生き抜くための大きな強さです。
吹田市・北摂地域で、私たちは
“相談できなかった子”が、もう一度“頼ってみよう”と思える関係性を丁寧に育てていきます。