“忘れっぽい・ミスが多い”——実行機能の発達と支援
◆「何度言ってもできない」のは、なぜ?
・宿題をやったのに持っていくのを忘れる
・明日の準備をしていたはずなのに、ランドセルに何も入っていない
・授業中に必要な道具を出せずに、周囲とタイミングが合わない
・お手伝いを頼んだのに途中で他のことを始めてしまう
吹田市や北摂地域の学校やご家庭でも、
「集中できない」「忘れっぽい」「ケアレスミスが多い」といった悩みは非常に多く、
「ちゃんと教えてるのに、なぜできないのか?」という疑問を多くの大人が抱えています。
しかし、こうした行動の背景には、“実行機能(executive function)”の発達課題が隠れていることがあるのです。
◆ “実行機能”とはなにか?
実行機能とは、脳の前頭前野に関係する働きで、
以下のような**「自分の行動をうまくコントロールする力」**を指します。
実行機能の主な要素:
1.ワーキングメモリ(作業記憶)
→「頭の中で情報を一時的に保持しながら作業を進める力」
例:3つの用事を順番に済ませる、指示されたことを一度で覚えて実行する
2.抑制制御
→「衝動を我慢したり、注意を向け続ける力」
例:話しかけたい気持ちを抑える、途中で別のことに気を取られない
3.シフト(柔軟性)
→「状況に応じて気持ちや行動を切り替える力」
例:計画が変更されたときに混乱しない、新しい方法に挑戦できる
これらは大人にとっても難しい機能であり、
子どもは年齢とともに徐々に育てていく必要がある発達領域なのです。
◆ 北摂の事例:小5男子の「いつも忘れてしまう」困り感
北摂地域の小学校に通う5年生の男の子。
毎日のように筆箱やプリント、体操服などを忘れてしまい、
親からも先生からも「何度言ったらわかるの?」と叱られ続けていました。
ある日、担任の先生がふと「忘れないようにする方法、ある?」と聞いたところ、
彼はポツリとこう言いました。
「覚えてようとしても、次のことを考えたら、もう前のがなくなってる」
「カバンに入れるって決めても、その前に何か言われると、忘れちゃう」
これは、努力の問題ではなく“処理の難しさ”。
実行機能の特性に配慮しないまま、“やる気”や“性格”のせいにしてしまうのは酷なことなのです。
◆ 吹田市の心療内科での支援:実行機能を“支える”アプローチ
「ゆうゆうからだとこころのクリニック」では、
「できない」ことを“怠け”とみなすのではなく、
「支えればできるかもしれない」こととして扱う支援を行っています。
🔹① 支援は「声かけ」ではなく「構造」で行う
→ 「ちゃんと準備してね」よりも、視覚的・物理的に分かりやすい仕組みの方が効果的です。
例:チェックリスト、定位置収納、写真つきルール表など
🔹② “うまくできた”体験を意識して積む
→ 小さな成功を積み重ねることで、“どうせできない”という学習性無力感を防ぎます。
🔹③ 注意がそれることを前提にスケジュールを組む
→ 完璧な行動を期待するのではなく、「リカバリー可能な環境」をつくる(例:予備を用意する)
🔹④ 「記憶」ではなく「記録」で補う
→ 頭の中にとどめようとするよりも、付箋、アプリ、アラーム、カレンダーなどの補助手段を活用します。
🔹⑤ 家庭・学校との連携:期待の“階段”を可視化する
→ 大人側の「当然これくらいはできるはず」という暗黙の期待が、
子どもにとっては登れない“急な階段”になっていないかを見直します。
◆ ご家庭でできる3つの工夫
🔷 ① 「忘れた=だらしない」ではなく、「忘れた=仕組みを変えよう」と捉える
→ 子どもに自信を失わせず、改善の余地を共に探る姿勢を大切に。
🔷 ② “見える化”は支援、甘やかしではない
→ チェックリスト、曜日ごとの持ち物一覧、視覚スケジュールなどは
**“自立のための支援”**であり、依存ではありません。
🔷 ③ できたことを“機能”の言葉でフィードバック
→ 「忘れずに持って行けたね」→「それって、ワーキングメモリがすごく働いたね!」
といったフィードバックが、実行機能への自己認識を育てます。
◆ “できなかった”の裏にある、がんばりを見つけるまなざし
子どもが忘れたり、抜けたり、うまく切り替えられなかったとき、
「何やってるの!」と責めたくなる気持ちも、もちろんあるでしょう。
でも、もしそれが**「努力」ではなく「発達の段差」だったとしたら?**
吹田市・北摂地域で、私たちは
“つまずき”の奥にある子どもの努力と困難さを見つけ出し、
その子の“できるようになり方”を一緒に探していく支援を大切にしています。