“感情の起伏が激しい子”——情緒の波とのつきあい方
◆「さっきまで笑っていたのに、急に怒る/泣く」
・怒り出すと止まらない
・注意されると必要以上に落ち込む
・うれしさが爆発して周囲との温度差が生じる
・感情に飲み込まれてしまい、自分でも制御できない
吹田市・北摂地域の保護者や教育関係者の方から、
「感情の浮き沈みが激しくて振り回されてしまう」
「ちょっとしたことでパニックや怒りに火がつく」といった相談をいただくことがよくあります。
こうした子どもたちの背景には、
“情緒調整(emotion regulation)”の困難さがあります。
そしてそれは、決して“わがまま”や“甘え”ではありません。
◆ 情緒の波は“脳の発達の一部”
子どもの脳、とくに前頭前野(感情をコントロールする部分)は、
まだ発達の途中段階にあります。
・感情が生じるスピードが速い(瞬発力がある)
・感情を言語化する力がまだ未熟
・自分の状態をメタ認知(客観視)することが難しい
これにより、感情に“呑み込まれる”ことが頻繁に起きるのです。
つまり「感情に振り回される子ども」は、発達のプロセス上、ごく自然な存在とも言えます。
◆ 北摂の事例:小3女子の“涙のスイッチ”
北摂地域の小学校に通う小学3年生の女の子。
授業中に先生から「もう少し静かにね」と軽く注意されただけで、
急にうつむいて泣き出してしまいました。
周囲の友だちは驚き、先生も困惑。
後日の面談で、彼女はこう語りました。
「うるさいって言われたと思った」
「悪い子って思われた気がして、頭が真っ白になった」
この子にとって、“注意された”という事実は、
“自分を否定された”という感情に直結していたのです。
◆ “起伏が激しい”子に見られる特徴とその心理
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行動例 |
背景にある可能性 |
|---|---|
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怒りやすい |
自分の気持ちをうまく伝えられず、ストレスが爆発してしまう |
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泣きやすい |
自己評価が低く、否定に敏感。繊細な感受性の持ち主 |
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テンションが急に上がる |
喜びや楽しさのピークで、自他の境界が薄れる |
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一日の中で気分が激変する |
疲れや刺激への感受性が高く、心身が揺れやすい |
これらは、単なる“感情のコントロール不足”ではなく、
「感じすぎる力」「表現したい衝動」との未調整の状態でもあります。
◆ 吹田市の心療内科での支援:波を“なだらかにする力”を育てる
「ゆうゆうからだとこころのクリニック」では、
感情の起伏が激しい子どもたちに対して、
以下のようなアプローチで支援しています。
🔹① 感情の“波”を見える形にする
→「怒りグラフ」「気分の温度計」などを使い、
感情がどう動くかを“客観視”する支援を行います。
🔹② 感情が高ぶる前兆に気づく練習
→ 「手が熱くなる」「心臓がドキドキする」など、
身体感覚をヒントに、感情の“兆し”を拾う習慣をつけます。
🔹③ クールダウンのための“選択肢”を用意
→ 呼吸法、好きな音楽、ぬいぐるみ、絵を描く、言葉にするなど、
**気持ちを鎮める方法の“道具箱”**を一緒に作ります。
🔹④ 「高ぶること」を否定しない関係性
→ 「また怒ってる」「どうして泣くの」ではなく、
「つらかったんだね」「びっくりしたよね」と共感することで、
“感情=悪いもの”という思い込みを減らしていきます。
◆ ご家庭でできる3つの工夫
🔷 ① 感情を“整理”ではなく“いったん預かる”姿勢で
→ 子どもが爆発しているとき、整理しようとせず、
「しんどいの、預かるよ」という気持ちで寄り添う。
🔷 ② 感情の余白をつくる習慣
→ 起床後や帰宅後、すぐに予定や指示を詰め込まず、
「ただ一緒に過ごす時間」を毎日に取り入れることで、心にゆとりが生まれます。
🔷 ③ “落ち着いたあと”のフィードバックを大切に
→ 爆発中ではなく、少し時間をおいてから、
「あの時、自分を止められてすごかったね」と肯定的な振り返りをする。
◆ 感情の波を“なだめる”のではなく、“ともに乗り越える”という視点へ
子どもが感情を揺らすとき、
それは**「この世界に自分をぶつけてみたい」という成長の試み**でもあります。
感情を“制御すべきもの”と捉えるだけでなく、
「一緒に揺れてくれる大人がいる」ことが、その波を穏やかにしていく第一歩になるのです。
吹田市・北摂地域で、私たちは
子どもたちの感情に丁寧に付き合いながら、
“気持ちとうまくつきあう力”を育てていく支援を続けています。