“感情を感じられない”——無表情・無反応の背景にある凍結反応
◆「なにも感じていないように見える」子どもたち
・何を話しかけても「別に」としか返ってこない
・褒めても叱っても無表情
・楽しそうなことにも関心を示さない
・目の奥に生気がなく、遠くを見ているような眼差し
吹田市・北摂地域のご家庭や教育現場でも、
「この子、感情が薄いのでは?」と心配されるケースがあります。
しかし、こうした状態を「冷めている」「無関心」と一括りにするのは危険です。
そこにはしばしば、“凍結反応(freeze response)”と呼ばれる心理的な防衛状態が潜んでいるのです。
◆ “凍る”という防衛
心理的ストレスや外的な脅威に直面したとき、
人の反応は一般に3つに分類されます:
- 戦う(fight)
- 逃げる(flight)
- 凍る(freeze)
このうち、「凍る(freeze)」は、外からは**“何もしていない”ように見える**反応です。
しかし実際は、身体と心が極度の緊張状態にあるのです。
◆ 凍結反応のサインとは?
・楽しいはずの場面でも笑顔が出ない
・体が硬直している(肩・手指・顔)
・声が小さく、抑揚がない
・表情が変わらない
・内心「怖い」「イヤだ」と思っているのに、外に出せない
これは、過去に強いストレスや不安を“感じすぎた”経験があり、
それに対する**“感じないようにする”という自己防衛の結果**でもあるのです。
◆ 北摂のケース:小6女子の「感じない」ようにしてきた心
北摂地域の小学6年生の女の子。
人と話すことはできるが、笑うことも怒ることも少なく、
「人形みたい」と言われたことがあるという。
学校では問題が表面化していなかったものの、
家庭では食事も口数も減り、保護者が相談に訪れました。
面談で彼女はこう語りました:
「嫌なことがあっても、なかったことにする方が楽」
「前に本音を出したとき、“そんなの気のせい”って言われて、もうやめようと思った」
彼女は、**“感じないことで自分を守ってきた”**のです。
◆ 吹田市の心療内科での対応:「感じる力」を取り戻す支援
「ゆうゆうからだとこころのクリニック」では、
こうした凍結反応を示す子どもに対し、次のようなアプローチを重視しています。
🔹① 感情を「感じる」ことの安全性を整える
→ 「感じても、ここでは否定されない」「そのままで受け止められる」という環境の確保が第一です。
🔹② 表情・体感・言葉の“ズレ”を見逃さない
→ 笑っていても手が冷たい/声は出ていても目に力がない、など
**「心と身体のどちらが凍っているか」**を丁寧に観察します。
🔹③ 感情に“名前”をつける支援
→ 「それって、ちょっと寂しかった?」
→ 「ムカつくって言ったけど、ほんとは傷ついたんじゃない?」
といった共感的リフレーミングがカギとなります。
🔹④ 遊びや創作を通して“感じる”体験を
→ 絵を描く、物語をつくる、ごっこ遊びなど、言葉にならない感情を外に出す場が、解凍の手がかりになります。
🔹⑤ ご家族へのフィードバックと伴走
→ 無表情でも内心は嵐のように揺れていることを、ご家族と共有し、誤解を防ぐことが大切です。
◆ ご家庭でできる3つの工夫
🔷 ① 無理に感情を引き出さない
→ 「笑ってよ」「本当は悲しいんでしょ?」と追い詰めず、
沈黙も表現の一部として受け入れる。
🔷 ② 「今ここ」の共有を大切にする
→ 一緒にテレビを見る、散歩する、空を見上げる——
**感じるための“身体の経験”**を積み重ねることが回復の足がかりに。
🔷 ③ 微細な反応に気づき、肯定する
→ 「さっき、ちょっとだけ眉が動いたね」
→ 「それ言えたの、すごいと思ったよ」
子ども自身も気づいていない“心の動き”を見つけてあげることが安心になるのです。
◆ 凍った感情は、時間と関係性のなかで溶けていく
感情を閉じ込めて生きることは、
その子にとって過去の最善の選択だったのかもしれません。
私たち大人にできることは、
「もう感じても大丈夫だよ」という新しい記憶を一緒に育てていくことです。
吹田市・北摂地域で、私たちは
“感情を取り戻す”という繊細なプロセスに、
静かなまなざしと確かな支援で寄り添っていきます。