“質問に答えない子”——沈黙やズレの奥にある対話の準備
◆「聞いても返事がない」「答えが返ってこない」子どもたちとの向き合い
・「どうだった?」と聞いても、「べつに」「わからない」
・質問に対してまったく違う話題で返してくる
・話の途中で固まり、沈黙になる
・話していたはずが急に無反応になる
・保護者や先生が繰り返し問いかけても、反応が乏しい
吹田市・北摂地域の学校や家庭でも、「質問に答えない」「無視してるように見える」子どもについての相談は多く、
ときに「反抗的」「会話が成り立たない」と受け取られてしまうこともあります。
しかし、その沈黙やズレの背後には、
“対話に入るための準備段階”が、まだ整っていないという事情が潜んでいるのです。
◆ 質問に“答えない”のではなく、“答えられない”のかもしれない
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行動 |
背景にある困りごと |
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質問されて固まる |
言語化に時間がかかる/質問の意味を把握するのが難しい |
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違う話題で返す |
質問の意図がずれて理解されている/関連付けが難しい |
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「わからない」とだけ言う |
思考や感情の整理が間に合っていない/失敗を恐れている |
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黙ってしまう |
“今は話せない”というサイン/心が守りに入っている状態 |
つまり、**“答えない”ことそのものが、子どもにとっての「反応のしかた」**なのです。
◆ 北摂の事例:小2男子の「答えたくないんじゃなくて、間違えたくない」
北摂地域の小学校に通う2年生の男の子。
授業中に先生が「どう思う?」と問いかけても、首をすくめて沈黙。
家庭でも「今日どうだった?」と聞いても「忘れた」「何も」と言って終わる。
個別支援の場面で少しずつ関係ができてきた頃、
ぽつりとこんな言葉をこぼしました。
「聞かれると、すぐ言わなきゃって焦って、でも違ったらイヤだし、頭が固まる」
「うまく言えないから、言わない方がいいって思う」
これは、**「わからない」のではなく、「間違えたくないから言えない」**という、自己防衛的な沈黙でした。
◆ 質問に“乗れない”子どもたちへの理解の視点
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見える行動 |
支援的な理解 |
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無反応になる |
話す準備ができていない/刺激が強すぎて思考が停止 |
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話がズレている |
質問の構造が複雑で、焦点を定めきれない |
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答えが単語だけ/曖昧 |
感情と言語の結びつきが未発達/語彙の少なさ |
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ふざけた答えをする |
自信のなさを隠すための“防衛的な演技” |
子どもの反応は、しばしば“言葉の不在”という形で私たちに届きます。
しかしそれは、“伝えたくない”ではなく、“伝え方がわからない”ことのあらわれです。
◆ 吹田市の心療内科での支援:答えを求める前に、“一緒に考える空間”をつくる
「ゆうゆうからだとこころのクリニック」では、
質問にうまく反応できない子どもたちに対して、以下のような支援を行っています。
🔹① 質問のハードルを“情報量・選択肢・構造”で調整する
→ 「どうだった?」→「楽しかった?つまらなかった?」→「何が楽しかった?」
→ 段階的に質問をほぐすことで、答えやすさが大きく変わる
🔹② 答えの内容よりも「答えたこと自体」に注目して承認する
→「そう答えてくれてありがとう」
→ “言えたこと”にOKが出ると、対話の土台が育ちやすくなる
🔹③ 絵やジェスチャー、スケッチなど非言語的な返答手段も用意する
→「どれに近い?」と表情カードを見せる/「この中でいちばん当てはまるのは?」と指さしで答える
→ “言葉にしなくても伝わる”経験が、次の言語化への安心になる
🔹④ “考える時間”をあえてつくる
→ 質問後、すぐに答えを求めず、10秒ほど沈黙の余白を設ける
→ 焦らされない対話のテンポが、思考の余白を守る
◆ ご家庭でできる3つの工夫
🔷 ① 一問一答より“会話の流れ”を意識する
→ 質問を連発するより、「○○してたんだってね。楽しそうだったなあ」と共感を起点にする
→ “答える”より“つながる”を大切にする
🔷 ② 「考える時間、待ってるね」と予告して聞く
→ 答えを急かさず、“考える自分”を肯定できる環境づくりを心がける
🔷 ③ 答えが返ってこなくても、こちらの気持ちだけでも伝えておく
→ 「そっか、まだ話せないか。でも話してくれるの、待ってるよ」
→ “沈黙も尊重される”という体験が、信頼の土台をつくる
◆ 答えが返ってこないときも、“その子なりの対話”は始まっている
子どもが答えを口に出さないとき、
それは対話が起きていないのではなく、
“対話の準備が静かに進行している”ときかもしれません。
私たち大人ができることは、
言葉だけを頼りにせず、その沈黙の中にある意志や不安に、
耳をすませること。
吹田市・北摂地域で、私たちは
“答えない子どもたち”と向き合いながら、
“言葉にならない思い”に届く対話のかたちを探り続けています。