“顔色ばかりうかがう子”——過剰適応と自己喪失
◆「いい子だけど、どこか苦しそう」な子どもたち
・先生や親の期待を敏感に察して、空気を読んで動く
・周囲の評価に合わせて言動を変える
・「嫌だ」「やめて」が言えずに我慢し続ける
・「どうしたいの?」と聞いても「どっちでもいい」と返ってくる
こうした“顔色をうかがう子ども”は、吹田市や北摂地域でも多く見られます。
一見、手のかからない“よくできた子”に見えることもありますが、
その裏で、自分自身の感情や欲求を押し殺して生きている場合も少なくありません。
◆ 「適応しすぎること」が心をむしばむ
心理的に健康な“適応”とは、
他者との関係の中で折り合いをつけながらも、自分の気持ちを保てる状態を指します。
しかし“過剰適応”になると、
**「周囲の期待に合わせること」=「自分の存在価値」になってしまい、
気づかぬうちに自己喪失(self-loss)**に陥る危険があります。
◆ なぜ、子どもは“顔色をうかがう”ようになるのか?
背景には次のような心理が隠れています:
① 怒られないように生きるための“戦略”
過去に怒られたり、拒絶された経験がある子どもほど、
「空気を読んでいれば安心だ」と学習してしまいます。
② 家族の感情の起伏が激しい/期待が強い
「お母さんが落ち込まないように」
「期待を裏切ったら、もう愛してもらえないかも」
という過剰な責任感が根づいていることもあります。
③ 周囲から「いい子」として扱われ続けてきた
「しっかりしてるね」「さすがだね」——
褒められることで**“よい子の仮面”を脱げなくなる**こともあります。
◆ 北摂の事例:中1女子の「空気を読んで生きてきた」生き方
北摂地域の中学校に通う中学1年生の女の子は、
先生の前では礼儀正しく、友だちとのトラブルも一切ない“優等生”でした。
しかし家庭では、
「疲れた」「学校で笑ってばかりでつらい」と漏らすようになり、
ある日突然、学校に行けなくなりました。
面談で彼女が語ったのは:
「嫌われたくないから、全部合わせてた」
「でも、いつの間にか“本当の自分”がわからなくなってた」
これは、“適応”という名の仮面をかぶりすぎた結果、自己とのつながりが切れてしまった状態でした。
◆ 吹田市の心療内科での支援:自分を取り戻すプロセス
「ゆうゆうからだとこころのクリニック」では、
こうした“顔色ばかりうかがう”子どもたちに対して、次のような支援を行います。
🔹① 「自分の気持ちに気づく」練習からスタート
→ 「本当はどう思った?」「それって、好き?嫌い?」
という問いを繰り返しながら、自分の感覚と再びつながる作業を行います。
🔹② 「No」と言う経験を安全な場で積む
→ ロールプレイや日常場面の中で、
**「断っても大丈夫」「嫌と言っても関係は壊れない」**という感覚を育てます。
🔹③ 「誰かの期待」ではなく「自分の希望」を探す
→ 「何をしたらほめられるか」ではなく、
「何をしているときが心地よいか」を丁寧に見つけていきます。
🔹④ 家庭との連携:親の“期待”を見直す対話
→ 「できる子」に無意識のうちに期待しすぎていないか、
“いい子であってほしい”気持ちの背景を共に見直します。
◆ ご家庭でできる3つの工夫
🔷 ① 「どう思う?」の代わりに「好き? 嫌い?」と聞いてみる
→ 「どうしたい?」と聞かれると困る子でも、
「楽しかった? しんどかった?」など感覚に近い質問には答えやすくなります。
🔷 ② “できなかったこと”に安心のリアクションを
→ 「断れたね!」だけでなく、「断れなかったけど、自分で気づけたのはすごいよ」
と、プロセスへの肯定を伝える。
🔷 ③ 親自身が「人に合わせすぎた経験」を話してみる
→ 「昔、無理していい顔してたことあるよ」など、
親の“過去の揺らぎ”の共有が、子どもの安心につながります。
◆ 「いい子」は“ほんとうの子”とは限らない
空気を読んで、誰にも迷惑をかけずに生きる子どもたちは、
その分だけ“自分”を置き去りにしているかもしれません。
私たちは、**「合わせてくれる子」ではなく、「自分のままでいてくれる子」を大切にする関係性を築いていきたい。
吹田市・北摂地域で、そうした“自己を取り戻す支援”**を、ひとりひとりと丁寧に続けています。