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「リストカット」「肌をひっかく」——児童思春期における自傷行為の背景と寄り添い方

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ある日突然、腕に傷があるのを見つけた——そのとき親ができること

「なんでこんなことを…?」
「まさかうちの子がリストカットを?」
「理由もわからず、ただショックで…」

児童思春期のお子さんが自分を傷つけている場面に直面した保護者の方からは、こうした声がよく聞かれます。
吹田市の心療内科でも、最近このような“子どもの自傷行為”に関する相談が増加しています。

この問題は、単なる“問題行動”や“かまってちゃん”という言葉で片付けられるものではありません。
自傷行為は、言葉にならない「こころの叫び」であることが多いのです。

自傷行為とは——命を絶つためではなく、“今を耐える”ための行動

多くの方が「リストカット=自殺未遂」と捉えがちですが、実際にはそうとは限りません。
むしろ、児童思春期における自傷の多くは、「死にたい」ではなく「生きるのがつらい」ことへの対処行動です。

代表的な自傷の例としては:

  • カッターやハサミで手首・腕を切る
  • 爪で肌を強くひっかく
  • 髪を抜く
  • 爪を噛み続ける
  • 頭や壁を打ちつける

これらはすべて、「つらい気持ちをどうにかしたい」「無力感や怒りをどうにか外に出したい」という感情のコントロール手段として行われることがあります。

なぜ自傷してしまうのか——子どもの内側で起こっていること

自傷行為には、以下のような心理的背景があります。

感情の抑圧と爆発

うまく気持ちを言葉にできない子どもほど、内側にストレスが溜まりやすく、それが突然自傷という形で現れます。

自己否定感・無価値感

「自分なんていない方がいい」「誰にも必要とされていない」といった思いから、自罰的行動に向かうことも。

安心の代替手段

「切ると気持ちが落ち着く」「血を見ると安心する」と語る子どももいます。脳内ホルモンの変化が一時的に安堵感を与えることもあるため、習慣化しやすい傾向があります。

他者とのつながりを求めて

本人が意図せずとも、「心配してほしい」「気づいてほしい」という無意識のサインとしての自傷も存在します。

北摂地域でも広がる「SNSきっかけ」の自傷行為

最近では、SNSや動画サイトで「自傷をしている人の投稿」が容易に見られるようになっています。

北摂地域の中高生でも、

  • 自傷写真をアップして“共感”を得る
  • 他人のリストカット動画を見て影響を受ける
  • 自傷を“普通のこと”と感じ始める

といったケースが散見されます。

このような情報の氾濫が、子どもたちの“境界”を曖昧にし、エスカレートの引き金となることもあるのです。

吹田市の心療内科での支援——「切らなくても大丈夫」を育てる関わり

ゆうゆうからだとこころのクリニックでは、自傷行為に悩むお子さんとそのご家族に対して、以下のような支援を行っています。

  • 本人との信頼関係づくり
    「怒らない」「否定しない」を基本とし、まずは安心して話せる関係性を築くことから始めます。
  • 背景の整理(認知行動療法的アプローチ)
    何がきっかけで傷つけたくなったのか?
    そのとき、どんな気持ちだったか?
    傷つけずに気持ちを外に出す別の方法はあるか?

    といった視点で、感情と行動を整理し直すサポートを行います。
  • 家族への支援
    「見守るってどういうこと?」「どこまで介入すればいいの?」といった保護者の不安に寄り添い、家庭での対応指針を共有します。
  • 学校・支援機関との連携
    必要に応じて、学校カウンセラーやスクールソーシャルワーカーと連携を取り、継続的な支援体制を構築します。

保護者にできる、たった一つのこと——「見捨てない」

自傷行為に直面したとき、親御さんの多くはショックを受け、「どうして?」「やめなさい!」と怒ってしまいがちです。
けれど、子どもたちが本当に聞きたい言葉は、

「そんなに苦しかったんだね」
「ちゃんとそばにいるからね」
「一緒に考えよう」

という、見捨てないというメッセージなのです。

子どもたちにとって、「自分の痛みを受け止めてくれる人がいる」ことは、それだけで回復の大きな一歩となります。

最後に——“切らないと落ち着けない”から、“話せば少し楽になる”へ

自傷は、やめようと思っても簡単にはやめられません。
けれど、安心できる人とのつながりがあれば、少しずつ「他の選択肢」を持てるようになります。

吹田市・北摂地域で、「もしかしてうちの子も…」と感じたときは、一人で抱え込まず、心療内科などの専門機関にご相談ください。

私たちは、傷の“数”ではなく、その背景にある“気持ち”に目を向け、子どもたちが自分自身と仲良く生きていける未来を一緒に支えていきます。