「友だちができない」——児童思春期の人間関係の悩みと心の支え方
「友だちができない」「仲間に入れない」——よくあるけれど見えにくい悩み
「うちの子、ひとりぼっちで過ごしているようなんです」
「仲良くしていた友だちと、急に話さなくなったみたいで…」
「いじめではないけど、なんとなく“浮いている”感じがある」
吹田市の当院では、児童思春期のお子さんの「人間関係の悩み」についてのご相談を多く受けています。
学校生活の中での“友だちとの距離感”は、この年代の心にとって非常に大きなテーマです。
ただ、こうした悩みはテストの点数のように目に見えないため、周囲が気づきにくく、子ども自身も言葉にしにくいという難しさがあります。
「友だち=たくさんいることが正解」ではない
現代の子どもたちは、SNSや動画の中で「みんなでワイワイ」「仲良しグループ」が当たり前のように描かれている世界に囲まれています。
その影響で、「友だちがいない=自分はおかしい」「孤立している=失敗している」というような思い込みを持ちやすくなっています。
けれど、人間関係の心地よさには“個人差”があるということを、まず大人が理解しておく必要があります。
- ひとりで過ごす時間が好きな子
- 少人数の関係を大事にする子
- 常に集団の中にいると疲れてしまう子
どれも、その子なりの「人との付き合い方」です。
“みんなと仲良く”ができない子を「コミュニケーションが苦手」と一括りにしてしまうのではなく、「どんな関わり方が心地よいか?」という視点で見守ることが大切です。
「友だちとうまくいかない」背景には何がある?
子どもが「友だちができない」と感じる背景には、いくつかの要因が重なっていることがあります。
- 自分の気持ちを言葉でうまく表現できない
- 相手の気持ちを読み取るのが苦手
- 不安が強くて自分から話しかけられない
- 過去に拒絶された経験から怖くなっている
こうした背景には、発達特性(ASDやADHD)や不安傾向、HSP(とても敏感な気質)などが関係していることもあります。
吹田市内の学校では支援学級やスクールカウンセラーの活用が進んでいますが、こうした心の違和感や苦手さに気づいてもらうには、やはり専門的な評価や継続的な関わりが必要になることもあります。
医療機関でできること:関係性の「練習の場」をつくる
当院では、児童思春期のお子さんの「対人関係スキル」に焦点をあてた心理療法(個別またはグループ)を行っています。
「うまく話せなかった経験」を「どうしたら伝わるか」の学びに変えるワークや、実際の学校での出来事をロールプレイで振り返ることで、少しずつ「安心して関われる感覚」を育てていきます。
たとえば、こんな練習をしています:
- 表情カードを使って、相手の気持ちを考えてみる
- 自分の気持ちを3語で表す練習
- 相手に頼みごとをするときの言い方の工夫
- 断り方や距離の取り方の練習
など。
これらの練習は、ただ“うまく話せるようになる”ためではなく、「人と関わっても大丈夫」という感覚を取り戻すためのものです。
「ひとりでも安心できる場」が人との距離を変える
無理に友だちを作らせようとせず、まずはひとりでも安心できる場所を確保すること。
そこから少しずつ、他者との距離を取り戻していくことが大切です。
- 学校での「避難できる場所」
- 家庭での「否定されずに話せる時間」
- 医療機関や支援施設での「受け止めてもらえる関係」
吹田市の地域資源を活用しながら、こうした“安心の基地”を作る支援が今、求められています。
子どもたちは、「ひとりでも安心できる」と思えたとき、初めて「誰かと関わってみようかな」と感じられるのです。
「孤立」ではなく、「自分らしい距離感」へ
思春期の人間関係は、大人が思っている以上に繊細で、傷つきやすいものです。
だからこそ、子どもが「誰かとつながりたいけど、どうしていいかわからない」という気持ちを抱えているとき、
「どうしたい?」と丁寧に聞いてあげることが、最初の一歩になります。
“友だちがたくさんいる”ことが正解ではなく、“自分らしくいられる関係”がひとつでもあること。
その価値を、子どもたちにそっと伝えていける大人でありたいですね