「音がつらい」「においが無理」——児童思春期の“感覚過敏”と、心の居場所づくり
「うるさい」「くさい」——過剰反応に見えるその感覚、実は“本当のつらさ”かもしれません
「掃除機の音が怖くて部屋から出られない」
「体育の笛の音で頭が割れそうになる」
「給食のにおいで教室にいられなくなる」
そんな子どもたちの訴えに、「わがまま?」「気にしすぎ?」と感じたことはありませんか?
実はこのような状態は、感覚過敏(Sensory Over-Responsivity)と呼ばれる状態の一つです。
児童思春期の心療内科の現場でも、吹田市を中心に、この“感覚のつらさ”に悩むご相談が増えています。
感覚過敏とは?——五感が“鋭すぎる”子どもたち
感覚過敏とは、視覚・聴覚・嗅覚・触覚・味覚などの五感に対して、脳が通常よりも強く反応してしまう状態です。
たとえば:
- 普通の話し声が「怒鳴り声」のように聞こえる
- 人混みのざわめきが「頭に響いて我慢できない」
- 衣服のタグが「針で刺されているように感じる」
- 香水や給食の匂いが「吐き気を引き起こす」
こうした感覚は“その子にとってのリアルな体験”であり、「気のせい」「慣れの問題」ではありません。
発達特性との関係:ASD・ADHDとの併存も多くみられます
感覚過敏は、発達特性(とくにASD=自閉スペクトラム症や、ADHD=注意欠如多動症)と関連することが多くあります。
- ASDの子どもは「感覚フィルター」が弱く、刺激を全部同時に処理してしまう傾向
- ADHDの子どもは「感覚が鋭い+衝動性」で、“過敏”と“過反応”が重なりやすい
北摂地域のように教育環境が整った地域でも、こうした特性があることで集団生活の中で目立ってしまい、二次的な不登校や不安障害につながるケースも見られます。
親や教師ができる3つの理解と対応
感覚過敏は外見ではわかりづらく、対応に困ることもあると思います。
しかし、以下のポイントを意識するだけで、子どもにとっての安心感は大きく変わります。
- 「困らせている」のではなく「困っている」
まずは、本人の感覚を“信じる”ことから始めてください。
「そんなにうるさくないでしょ?」ではなく、「それはつらかったね」と共感する姿勢が大切です。 - 「避ける」ではなく「備える」
感覚過敏の子は、“回避”よりも“対策”が有効なことが多いです。
たとえば:
・音に敏感な子にはイヤーマフやノイズキャンセリングイヤホン
・匂いに弱い子にはハンカチに好きな香りを染み込ませておく
・教室の音がつらい子には別室学習や席の工夫 - 「感覚の疲れ」に気づいて休ませる
感覚過敏の子は、人よりも疲れやすく、静かな環境での“感覚リセット”が必要です。
「頑張れ!」よりも、「いったん落ち着ける場所に行こう」と声をかけることで、癇癪やパニックを予防できます。
心療内科でできる支援:見えない“しんどさ”に名前をつける
吹田市の当院(ゆうゆうからだとこころのクリニック)では、感覚過敏が疑われるお子さんに対して、以下のようなアプローチを行っています。
- 感覚プロフィールの評価(聞き取り・チェックリスト使用)
- 本人・家族への心理教育:「感じすぎる」ことの仕組みをやさしく説明
- 保護者への対応指導:「怒らない関わり方」「ルーティン支援の方法」など
- 学校との連携支援(配慮事項を伝えるための文書提供や面談同席)
感覚過敏は「弱さ」ではない——感受性の豊かさと共に生きる
感覚過敏のある子どもたちは、とても繊細で優しく、他者の気持ちにも敏感です。
その反面、日常の刺激にさらされやすく、疲弊しやすい傾向があります。
だからこそ、大人のまなざしで、
- 無理をさせすぎない
- 本人のペースを尊重する
- 対処スキルを一緒に育てる
という“伴走者としての関わり”が必要なのです。
北摂のご家庭へ——「気にしすぎ」は、子どもからの大切なサインかも
「過敏」という言葉に、ネガティブな印象を持つ方も少なくありません。
でも、それはその子が世界を深く、真剣に感じている証拠かもしれません。
北摂地域のご家庭・教育現場で、そうした繊細な感受性を否定せず、むしろその子の“資質”として受け入れる文化が広がることを願っています