「やる気が出ない」「何もしたくない」——児童思春期の無気力と向き合うには
無気力は“怠け”ではない——まずその誤解を解く
「ゲームばかりして勉強に手をつけない」
「以前は好きだったことにも興味を示さなくなった」
「ずっと寝ていて、声をかけても反応が薄い」
吹田市で生活するご家庭でも、児童思春期の「無気力状態」に悩む声をよく耳にします。
ですがこの“やる気のなさ”は、多くの場合、心と身体がバランスを崩しているサインであって、決して怠惰や甘えではありません。
思春期は、ホルモンバランスの変化に加え、学校・家庭・人間関係などで多くのプレッシャーを受ける時期です。
そのストレスの累積によって、心のエネルギーが一時的に枯渇してしまうことがあるのです。
「なんとなくやる気が出ない」に隠れた本当の感情
本人に理由を聞いても、「わかんない」「別に」と返されるだけ。
大人から見ると「どうしてこんなに無気力なのか」がわからず、ついイライラしてしまうこともあるでしょう。
しかし、「無気力」の裏には、以下のような複雑な感情が潜んでいることがあります。
- 自分には価値がないと思っている(自己否定)
- 何をしても意味がないという無力感
- 怒りや悲しみをうまく表現できないもどかしさ
「頑張れない自分」に対する罪悪感
これらは言葉にするのが難しいため、結果として「何もしたくない」という行動として現れます。
無気力は“感情のフリーズ状態”とも言えます。
やる気を取り戻すために大人ができること
無気力な状態の子どもに対して、「とにかく動かそう」「やる気を出させよう」と強く働きかけてしまうと、
かえって本人はプレッシャーを感じ、自己否定が強くなることがあります。
まず大切なのは、「今は充電期間なのかもしれない」と捉えること。
そして、以下のような関わり方が有効です。
- 「今は疲れているんだね」と共感する
- 「やる気が出ないときもあるよ」と伝えて安心させる
- 小さな行動に対して「できたね」とフィードバックする
- 一緒にリズムを整える(起床・食事・入浴など)
吹田市では、こうした関わりの工夫を取り入れた家庭支援プログラムが教育・医療連携で進められつつあります。
医療や専門機関を頼るタイミングは?
「ずっと無気力なまま続いている」
「日常生活に支障が出ている(登校困難、昼夜逆転、食欲低下など)」
「ネガティブな発言や希死念慮が出てきている」
といった状態がみられる場合は、医療機関の受診を検討するタイミングです。
当院では、児童思春期のメンタル不調に対して、医師・臨床心理士・家族支援員が連携して対応しています。
心のエネルギーが枯れているときは、「頑張らせる」のではなく、「一緒に立ち止まってくれる存在」が必要なのです。
「やる気」は人から与えられるものではなく、自然に湧いてくるもの
「どうしたらやる気が出るのか?」という問いは、実は少し方向が違っています。
やる気というのは、「安心して休めた」「否定されずに話せた」「小さな成功体験があった」といった積み重ねの中で自然と湧いてくるものです。
そのためには、
- 比較しない
- 急がせない
- 完璧を求めない
という、大人の“まなざし”の調整が必要です。
吹田市のような都市部では、周囲との競争や評価に無意識に影響されやすいため、家庭の中での「あなたはあなたで大丈夫だよ」というメッセージが、何より大きな支えになります。
何もしない時間も、成長の一部
「このままではダメになってしまうのでは…」と不安になるかもしれません。
でも、何もしないように見える時間も、子どもにとっては自分を取り戻す大切なプロセスです。
“やる気が出ない時期”を経て、
“自分の気持ちと向き合う力”が育ち、
“本当にやりたいこと”が見えてくる
それは、とても自然で、尊い心の動きです。
「何もしたくない」と感じているその子に、「それでもいいよ。そばにいるよ」と伝えられる大人でありたいですね。
当院では、吹田市を中心に、子どもたちのこうした声なきSOSを一緒に受け止め、無理のないステップで“その子らしさ”を取り戻すお手伝いをしています。