「学校に行きたくない」は甘えじゃない——児童思春期に増える“行き渋り”というサイン
朝になるとお腹が痛くなる、涙が出る——子どもからのサイン
「朝になると急にお腹が痛いと言い出す」
「学校のことを話すだけで涙を流す」
「休ませたら元気になるけれど、また翌日になると同じ繰り返し…」
こうしたお子さんの“行き渋り”に戸惑う保護者の方は、吹田市や北摂地域でも年々増えてきています。
「甘えているだけでは?」「ただのわがままでは?」と悩まれることもあるかもしれませんが、行き渋りは、子どもが今感じている不安やストレスの“こころからのサイン”なのです。
行き渋りが起こる背景には何がある?
児童思春期は、「友だち」「先生」「勉強」「部活動」など、さまざまなプレッシャーにさらされやすい時期です。
とくに以下のような状況が続くと、子どもたちは学校そのものに不安や恐怖を抱きやすくなります。
- クラス内での人間関係がうまくいっていない
- 授業についていけない、勉強の不安
- 担任の先生との相性が合わない
- 発達特性による疲れや緊張
- 家庭内の変化(引っ越し・離婚・兄弟の進学など)
これらは、表面的には見えづらいため、「突然、行きたくないと言い出した」と感じられることも多いですが、実際には少しずつ積み重なったストレスが限界に達した状態であることがほとんどです。
行き渋りと不登校は別もの?
多くの保護者の方が不安に思うのが、「このまま学校に行けなくなるのでは?」ということ。
確かに、行き渋りが続くと不登校につながるケースもあります。
しかし、行き渋りの段階で適切な対応をすれば、多くの子は“再び前を向く力”を取り戻すことができます。
不登校という言葉に過剰に反応するのではなく、
「今は休む必要がある時期なんだな」
「こころのエネルギーが足りていないんだな」
と捉えてあげることが、再出発への第一歩となります。
親ができるサポートとは?
吹田市の心療内科でも、行き渋りの相談は年間を通じて多く寄せられます。
以下のような対応を心がけることで、子どもは少しずつ安心を取り戻していきます。
「無理やり登校させない」
まずは安心できる環境をつくることが優先。無理強いは逆効果。
「本人の気持ちを言葉にして代弁する」
「不安なんだね」「学校に行きたいけど、怖い気持ちもあるんだよね」
「学校と協力し、段階的な関わりを」
保健室登校や別室対応、短時間登校からの再スタートも一案。
「生活リズムは崩しすぎない」
完全に昼夜逆転しないよう、起床・食事・運動のリズムを守ることが回復を助けます。
医療機関としてできること——心療内科の立場から
当クリニックでは、学校への行き渋りに悩むお子さんに対して、以下のような支援を行っています。
- 心理カウンセリング:安心できる対話の中で、気持ちを言語化する練習
- 行動記録や感情ワーク:どんなときに症状が出やすいかを見える化
- 保護者面談:ご家庭での関わり方の工夫や、負担の軽減方法をご提案
- 学校との情報共有(保護者同意のもと):担任・スクールカウンセラーとの連携支援
必要に応じた薬物療法:
強い不安・抑うつ傾向がある場合は、慎重に対応
心療内科は、「学校に行けないこと自体を治す場所」ではなく、「なぜそうなっているのかを一緒に考え、次の一歩を探す場所」です。
北摂地域では、学校・行政・医療が連携しやすい土壌が整っており、吹田市内の教育相談機関とも密に連携を取りながら支援を進めています。
子どもの「今」をまるごと受け止める勇気を
行き渋る子どもに対して、「このままで大丈夫?」と心配になるのは当然のことです。
でも、子どもが発している「行けない」の裏には、「助けて」「わかってほしい」「無理って言ってもいいの?」というメッセージが隠れていることが多いのです。
私たち大人にできるのは、「今のあなたのままで大丈夫」と伝えること。
学校に行くことよりも、「子どもが安心して心を取り戻すこと」を、まずは何よりも優先したい。
吹田市・北摂の子どもたち一人ひとりが、「また頑張ってみよう」と思える日を迎えられるよう、私たちはそっと背中を支えていきます。